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国内ミニ建物見学 ~天然材料の魅力~

(株)バウ設計集団 金城馨

 2012.12.07 

 

 私は、おおよそ2年に一度程度と頻度は低いのですが、大学時代の友人や職場の同期との近況報告会を兼ねて県外へ行くことがあります。その折には近郊に著名な建築物があれば、できる限り足を運んで建物を見るように心がけています。まぁ、どうしても美術館や店舗等の大きな建物になってしまうのですが... 

 今回、コラムを書くことにあたり、これまでの私の国内ミニ建築見学を振り返ってみると印象に残っている建物は石材等の天然材料をうまく取り入れながら、周囲の自然と整合した建物であることに気付きました。そこで、今回はいくつか印象に残っている建物の中でもお気に入り建築を2点と、そして、天然材料という点で最近、気になった建築を1点紹介させて頂きます。

 

まずは愛知県豊田田市に建つ豊田美術館です。

 

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この美術館は1995年に谷口吉生氏の設計で元々七州城があった高台に建設された建築物です。100m程の緩やかな勾配坂を上るとまず乳白色の合せガラスの外壁が見えはじめ、もう少し進むと深緑のスレートの受け壁をもつ正面玄関が出迎えてくれます。事前勉強なく当建物の見学に挑んでいた私は、その時点では、この建物のもつ魅力に全く気付いていなかったのですが、エントランスコートを出た瞬間世界は一変。計算しつくされた垂直・水平ライン、そのバランスのとれたフォルム。深緑の天然スレートと乳白色の合わせガラスの使用どころと、その配分に感動させられます。特に天然スレートの緑は乳白ガラスとのコントラストにより非常に映え、キャノピーを支える柱を覆った大版のスレートの迫力は強いインパクトを与えます。また、敷地内に設けられた"水盤"と"木々"、そして高台に建てられたことにより得られた視界を妨げるものがない"空"とで作り出された空間は見事で、水面に建物や周りの木々が写り込むことで周囲と建物が一体化している感じも受けました。この水盤の縁石は大ぶりの赤御影石となっているのですが、この赤御影石・水面・スレート床で構成される低いレベルでの自然要素のリズムも気持ちのよいものでした。一日中、いつまでもウットリできる空間がそこにはあります。

 こんな素晴らしい建物ですが以外に愛知県内の人でも訪れたことのない人も多いらしく、この空間美を堪能してもらいたいと思いつつも建物の魅力をじっくりと味わうには、来訪客が少ない方がいいのだろうなとも思う私でした...

 

 

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続いて二つ目に紹介させて頂くのはフランク・ロイド・ライト氏設計のヨドコウ迎賓館(旧山邑家)です。(既に行かれた方も多いでしょうし、ベタで申し訳ないですが...)

 この建物は兵庫県芦屋市の周囲が緑に囲まれた小高い丘に建っています。

私は芦屋駅方面から見たのですが、そこからは煙突がなんとなく見える程度でほぼ緑のカーテンで覆われていました。結構、急峻な坂を上がった後、敷地に入るのですが、建物を右手に続く玄関までのアプローチの道程から既に建物と木々の緑との調和が見られ期待感が増幅させられます。建物は塗装仕上げの黄みが強いベージュ色を基調としていますが、軒先に帝国ホテルでも使用した大谷石(おおやいし)を使用することでライト氏の特徴でもある長く伸びた水平ラインが強調されています。また、玄関や柱で見られる独特の質感を持つ大谷石の美しい配列も見事で、建物をぐっと引き締める役割を担いつつも、天然素材のもつ暖かさを醸し出していました。

 建物内(内部は撮影禁止なため写真はありません)においても、この大谷石の存在感はモノ凄く、RC壁と木の仕上げの中に存在することによって内部空間に重厚感を与え、品格を一段高いものへ昇華させている感じを受け、ライト氏ならでは洗練されたデザインの飾り窓や装飾棚等とのマッチングも絶妙です。2階応接室の大きな横長のFIX窓や廊下沿いに設けられた飾り窓から注ぐ光は心地良く、内部においても外部を感じさせるために大きな窓になっているのだろうと個人的には感じました。この窓に使われている飾り銅板は、クローバー?の形に似た植物の葉がモチーフとなっているようで、他の場所でも窓やドア・鴨居の上の欄間など随所に使われています。後に調べたところ、形だけでなく色も自然のグリーンに近づけるためわざわざ銅に緑青(ろくしょう)と呼ばれるサビを発生させたようです。建物に向かうときに見えた高く伸びる煙突を背にして長細く広々としたバルコニーからの眺めは絶景だったのですが、運悪くカメラの電池が切れてしまったので写真はありません... ライト氏設計の建物なので、沖縄の方も一度は是非とも足を延ばしてみるとよいと思います。

 

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 最後に天然材料というワードより、最近気になった建物を紹介します。それはアトリエ天工人 山下保博氏が設計の『アース・ブリックス』と命名された土ブロックでできた住宅で、今年のグッドデザイン賞も受賞された建物です。(先日、訪れた展示会にて模型写真を撮影したので掲載します。実際の写真はアトリエ天工人さんのH.P  http://www.tekuto.com/works/2011/186/info.html を覗いて下さい)。

 

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アース・ブリック模型写真

 

 私はテレビで偶然、この建物を目にしたのですが、やや閉鎖的であるものの土ブロック壁の表情、スリット窓やハイサイドライトから光が漏れている雰囲気は個性的で、興味をそそられました。構造上の制限だと思いますが床面積は40㎡程度、浴室・トイレ以外は間仕切りのない1ルームで階段を介してロフトの寝室へ通じていました(この寝室は壁もなくフルオープン!)。ご夫婦二人でお住まいのようで家族が増えた場合の対処や収納スペースの課題等はあると思いますが、内部は土壁の表情がそのまま生かされており、壁の曲線も手伝って、やさしい雰囲気が際立っている感じでした。このような天然材料の表情は好きなので改めて天然材料の魅力を感じるとともに、新しいことへ挑戦し続ける山下氏の情熱に敬服する思いでした。(この土ブロックを使って教会を建てる計画もあるようで、実現することに期待したいです。 )

 

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                   土の教会模型

尚、この建物で使用された土ブロックは大学・企業と連携して研究開発し、下記サイクルフローで環境負荷ゼロの完全リサイクルな構造体材料を実現したもののようです。

+砂利++酸化マグネシウム(MgO+水 ⇒ 乾燥(土ブロックの完成) ⇒ 水酸化マグネシウム(MgOH2) ⇒ 時間+CO2 ⇒ 炭酸マグネシウム(MgCO3) ⇒ 時間+CO2(より強度が増加) ⇒ 建物を壊す ⇒ 土に返る

 

 

 おわりに

 山下氏の土ブロックとはちょっと違うと思いますが、この"土"というワードから私は、藤森照信氏が著書『建築とは何か』の中で、藤森氏は人間の心の一番奥底まで届く建築材料は土となるだろうと述べ、自身の最後のテーマが土になるであろうという風に土についての思い(気持ち)が書かれていたことをふと思い出した。

 このように土だけでなく石材や木材といった天然材料というのは、古くから人間にとって身近なものであるが上に、その材料の放つエネルギーが無意識に人間のDNAを刺激し、人間の心を引きつけるのだろう。今後、もっと天然材料と向き合って色々挑戦し、建築・空間作りに取り込めていけると、より良い建物・空間デザインができるのではないだろうか?と思う今日この頃です。

さぁ、お次はどこへ見学に行こうかな?!

   

 

 

2012/12/07