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コンピュータをめぐる環境と建築について(スティーブ・ジョブズを追悼して)

バウ設計集団 高野 真史

2012.6.16

 

 

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 アップルコンピューターのスティーブ・ジョブズが亡くなり半年以上が過ぎて彼に関する話題も一段落した感があるが、彼が現代のテクノロジーに与えた影響の大きさには驚かされる。

 彼の作り出したヒット商品に共通しているのは、いかに簡単に使い手のイメージを実現してくれるかという、「人」と「コンピューター」との関係だろう。また、それに関連してデジタルコンテンツにいち早く目を付け、音楽・映像コンテンツを始めとするデジタル環境を開拓したパイオニアでもある。

スティーブ・ジョブズとは自分のするべきことに対して確固たる理念を持った天才的なカリスマであり(性格的には相当問題のあった人らしい。だから理想を実現することができたともいえるのだが。)、理想(ビジョン)を実現するためにコンピュータを使って世界を変えようとした人である。

 

 同じように「技術を背景に環境をつくっていく」という共通点はあるものの、建築の世界というのはあまり進歩的なものとは言いがい。特に住宅に関して言えば、少しずつ変化はあるものの、基本的には今までの生活スタイルに従って設計していくしかない。建築雑誌の世界では新しいスタイルを生み出すべく斬新な建物が生み出されているが、ほとんどが特殊解であり一般解にはなり得ていない。(だから雑誌に載っているとも言えるのだが。)

 

人間の生活習慣や行動パターンというのは本質的なところではそう簡単に変化しないようだ。人が生活していく上では光や風・風景という自然環境との関わりを常に求めていることも大きな要因となっている。現代を生きる私達は近代以降極端に文明が発達したような錯覚に陥っているが、江戸時代に比べて日本人はどれだけ変化したのだろうか。普段は都会での便利な生活を満喫している人々も、休暇になれば自然を求めてリゾート地へ赴いたり、わざわざ不便なキャンプ場のテントで寝泊まりするのも、ある種の原始的な本能なのかもしれない。

「便利さ」というのは意外にストレスと紙一重なのかもしれない。

 

 一方、インターネットや携帯電話など情報通信産業の世界では日々技術革新が進み、無線LANやスマートフォンiPhone)・タブレット端末機器iPadといったモバイルコンピューターが登場した。そのおかげでインターネットを利用する程度であれば、場所に縛られる必要すらなくなっている。普通の人々には中身を理解できないコンピューター技術が、人間をサポートするという意味でどんどん身近になってきている。実際のところインターネットが一般化し始めた十数年前にはインターネットがここまで普及するとは想像もしていなかった

 

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コンピューター技術というものは私たちの生活をほんの少し便利にしているに過ぎない。しかし、そのほんの少しのために人間は努力をかさねているのだろう。

 

 もちろん、こうした工業技術による便利さは表面的なものに過ぎないと思う。電気が発明され、エアコンや空調が一般化しても、窓の無い家には住みたくないように、技術が発展してもそれを使う「人間」を主体に考えたときの快適さというのは昔から現代までそう大きくは変わらないと思う。

普通の人は決して宇宙ステーションのような人工的な環境で生活したいとは思わないものだ。

しかし、電気の無い時代には後戻りできないように、技術は生活の一部になっている。「人」を中心とした理念があれば、人とうまく繋がりながら技術は進歩していくだろう。

 

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 SF小説や映画のように自動車はなかなか空を飛ばないけれど、ハイテクと自然が共生していくような未来が実現すれば、建築の将来も変わっていくのかもしれない。新たな技術によってそこに少しでも新しい「快適さ」がプラスできればそれはそれで素晴らしいことなのだろう。

 

 ITの世界のように華々しい商品を出すことはできないが、私達は光や風、家族のコミュニケーションといった「人」や「自然」を中心とした変わらないテーマの中に快適さを求めながら頑張っていくしかないし、それで良いのだと思う。

 

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2012/06/16